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院長コラム

アルツハイマー病の期待の新薬候補

2017年8月17日

前回のコラムでもご説明した通り、アルツハイマー病の原因は、アルツハイマー病の発症前から脳内にアミロイドβペプチドが蓄積して凝集を形成し、これが神経細胞毒性(神経細胞を壊す働き)を持つようになり、やがて神経細胞にリン酸化タウを主成分とする神経原線維変化が生じ、神経細胞が壊れて数が減ってくるにつれて、認知症症状が高度になってゆくという仮説が提唱されています。
現在使用可能なアルツハイマー病治療薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン)には、残念ながら、この神経細胞 の変性過程自体を食い止める効果はありません。
一方、現在、研究が進められているアルツハイマー病の新薬では、上記原因のどこかの過程にストップをかけて、神経細胞の変性を阻止し、認知症を進行しないようにする、そしてゆくゆくは認知症を治してしまうことができないかという、病気原因の根幹部分に対して試行錯誤が続けられています。

新薬の候補となる薬剤には、アミロイドβが産生されなくする薬、アミロイドβが凝集されなくする薬、脳内に蓄積してしまったアミロイドβを分解する薬、リン酸化タウが産生・凝集されなくする薬があります。 なお、下記の記載に出てくる、第2相試験とは少人数に対して有効性を確認する試験で、第3相試験とな多人数に対して実 際の治療に近い形で有効性を調べる試験(薬の開発における最終段階)のことです。
■アミロイドβが産生されなくする薬
セクレターゼ阻害薬は、アミロイド前駆蛋白を分解されなくして、アミロイドβが産生されるのを抑える薬です。アルツハイマー病の原因の最も上流のところで、そもそもアミロイドβが脳内で産生・蓄積しないようにすれば、認知症にならないのではないかと期待されています。
当初研究がすすめられた『γセクレターゼ阻害薬』は、体内で他の重要な働きを持っているため、副作用の懸念から中々開発が進んでいません。一方、『βセクレターゼ阻害薬(BACE阻害薬)』には、そのような副作用はないとされており、『E2609(エーザイ社)』と『AZD3293(イーライリリ ー社・アストラゼネカ社)』は、第2相試験で脳脊髄液中のアミロイドβを減少させることが確認され、現在は第3相試験が実施されています。
■アミロイドβが凝集されなくする薬
『タキシフォリン(国立循環器病研究センター)』は、アミロイドβの凝集を抑えて、神経細胞毒性を持つアミロイドオリゴマーの形成を防ぐ作用を持つポリフェノールの一種(野草のアザミに含まれるフラボノイド)です。動物実験では、アミロイドオリゴマーを大幅に減少させて、認知機能を回復させることができたと、2017年4月4日に発表されました。期待は大きいですが、今後臨床試験を開始するのことで、まだ時間がかかりそうです。
■脳内に蓄積してしまったアミロイドβを分解する薬
『アデ ュカヌマブ(バイオジェン社)』は、アミロイドβを標的とするモノクローナル抗体製剤です。アミロイドβは、アルツハイマー病発症の10年以上前から蓄積が始まると言われていますが、すでに脳内に蓄積してしまったアミロイドβを分解すれば、認知症が進行しなくなるのではないかと期待されています。アデュカヌマブは、第2相試験で脳内のアミロイドβを大幅に減少させ、記憶低下を抑制する可能性が確認されたので、現在は第3相試験が実施されています。頭痛などの副作用が比較的多い様です。
アデュカヌマブと同様のアミロイドβ抗体である、『ソラネズマブ(イーライリリー社)』と『ベルベセスタット(メルク社)』は、第3相試験で有効性を示せず、2016年開発中止が発表されました。
■リン酸化タウが産生・凝集されなくする薬
『T-817MA(富士フィルム社)』は、神経細胞が壊れるのを防ぐ作用と神経ネットワークを再構築する作用をもつ薬です。たとえ脳内にアミロイドβが蓄積していようと、アルツハイマー病の原因の下流のところで、神経細胞が壊れるのを防げば、認知症が進行しなくなるのではないかと期待されています。T-817MAは、第2相試験にて脳脊髄液中のリン酸化タウを減少させ、認知機能低下を抑制する可能性が確認されたので、今後は第3相試験を行うと、2017年7月19日に発表されました。
『メチルチオニウムLMTX(TauRX社)』は、リン酸化タウの凝集を抑制する作用を持つ薬で、NHK特集でも取り上げられて大きな期待を持たれていましたが、2016年に発表された第3 相試験の報告では有効性を示せませんでした。

これらの新薬の実用化にはまだ数年以上かかると思います。現在のところ、ポリフェノールによる抗酸化効果やEPA・DHAによる脳細胞活性化効果に期待して、緑黄色野菜や魚類を積極的に摂ることと、週3回以上有酸素運動を行うことがベストだと思います。

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